Awards
About JABA Award (Book Category)
We accept nominations, including self-nominations, from December to mid-February. Eligible books are those by members published between January 1 and December 31.
Introduction of award-winning works[2024]
2024年度日本経営学会賞(論文部門)研究奨励賞
久保田達也・大沼雅也・積田淳史
「専門家ユーザーによるイノベーションへの関与と障壁―医師を対象とした実証分析―」『日本経営学会誌』第56号掲載
● 受賞理由
本論文は、イノベーションの推進において重要な役割を果たすユーザーの関与を、専門家ユーザー、本論では、医療機関に所属する医師を対象として実証的に研究したものである。
医師という専門職の独自性から、本研究の一般化への課題もあることは本論でも述べられているところであるが、ユーザーイノベーションの促進要因だけでなく、専門ユーザーが直面する困難という、活動を阻害する要因にもアプローチしており、ユーザーイノベーション研究領域に新たな視点を導入し、学術的な新規性を示しているといえる。また、医療機器開発における医師の関与という、実践的な問題に取り組む意義も大きいといえる。
●受賞挨拶
久保田達也・大沼雅也・積田淳史
この度は、日本経営学会賞(論文部門)研究奨励賞にご選定を賜り、誠にありがとうございます。本受賞を著者一同、大変嬉しく存じております。審査委員長である鈴木由紀子先生をはじめ審査にご尽力くださいました先生方には、心より御礼申し上げます。二名の匿名レフェリーの先生方からは、我々の原稿が抱える課題を端的にご指摘いただくとともに、極めて建設的なご助言を賜りました。改めて謝意を表します。
本論文は、ユーザーイノベーションという現象に着目した研究です。特に「専門家ユーザー」と呼ばれる職業生活において製品を活用する主体に焦点をあて、彼(女)らがイノベーションに関与する/しないことに対してどのような要素が影響を与えうるのかを探求しています。既存研究は、趣味の延長線上でイノベーションに取り組むホビーストを主要な対象として知見を蓄積してきました。そこでは余暇や自由時間を活用して創造的活動に取り組む自律性の高い個人が想定され、専門家のように組織や集団に埋め込まれ、必ずしも個人の裁量だけでは活動の範囲やエフォートを決められない人々を想定した議論は展開されてきませんでした。それゆえに、関与をもたらす個人の特性や動機に関する知見は蓄積される一方で、ユーザーを取り巻く様々な要素と関与との関係に関する探求は限定的でした。
そこで我々は、専門家ユーザーとしての医師に着目し、医療機器開発というイノベーションへの営みに対して、関与する/しない医師を対象としたインタビュー調査と質問票調査を実施しました。特に「評価(周囲からの理解や評価を得られない)」、「資源(時間や資金などが十分にない)」、「適合性(専門知を活かせない)」という三つの側面が、関与の程度に対して与える影響に注目した分析を行いました。その結果、評価や適合性の有意な影響は確認されず、資源のみが負の影響を与えていました。つまり、専門家ユーザーは意欲や能力を仮に有していたとしても、日常業務における負荷や時間的制約が大きいと、イノベーションに関与しにくい可能性が示唆されました。
今後は、国際比較の視点を取り入れながら、専門家ユーザーを取り巻く組織的、制度的要素にも着目し、重層的な観点から研究を発展させたいと考えております。引き続き研究に精進いたしますので、今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
Introduction of award-winning works[2024]
2024年度日本経営学会賞(著書部門)研究奨励賞
江夏幾多郎, 田中秀樹, 余合淳
『人事管理のリサーチ・プラクティス・ギャップ―日本における関心の分化と架橋』(有斐閣)
● 受賞理由
本書は人事管理という経営学の一つの領域を対象にした研究であるが、本領域における日本の研究者と実務界のそれぞれにおける1971年以降の50年間にわたる言説を対象にした優れた実証的研究、学術史的研究であり、著者らによってデータベース化され、計量テキスト分析によって興味深い事実を明らかにしている。さらに、発見事実を踏まえ、リサーチ・プラクティス・ギャップを明らかにしたうえで、両者の交流について検討を加えている。これらの点は、経営学における他の研究領域へも適用される可能性を有している。もちろん、著者らが本書、終章において示しているように残された課題も存在するが、本書は将来的により大きな研究成果を志向する若手研究者による試みとして評価されるものであり、その萌芽的な取り組みを奨励する趣旨において意義があると判断される。
●受賞挨拶
Coming Soon
日本経営学会賞受賞一覧
▶ 著書部門
2024年度 研究奨励賞 |
江夏幾多郎、田中秀樹、余合淳 | 『人事管理のリサーチ・プラクティス・ギャップ―日本における関心の分化と架橋』(有斐閣) |
2023年度 | なし |
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2022年度 | 松尾 健治 | |
2021年度 | 藤岡豊 | 『⽣産技術システムの国際⽔平移転─トランスナショナル経営の実現に向けて─』(有斐閣) |
2020年度 研究奨励賞 |
兒⽟公⼀郎 | 『業界⾰新のダイナミズム−デジタル化と写真ビジネスの変⾰』(⽩桃書房) |
2019年度 研究奨励賞 |
松本 雄一 | 「実践共同体の学習」(白桃書房) |
2018年度 | 高井 文子 | 『インターネットビジネスの競争戦略:オンライン証券の独自性の構築メカニズムと模倣の二面性』(有斐閣) |
2017年度 | 宮尾 学 | 『製品開発と市場創造: 技術の社会的形成アプローチによる探求』(白桃書房) |
2016年度 | 山田仁一郎 | 『大学発ベンチャーの組織化と出口戦略』(中央経済社) |
2015年度 | なし | |
2014年度 | なし | |
2013年度 | 長山宗広 | 『日本的スピンオフ・ベンチャー創出論─ 新しい産業集積と実践コミュニティを事例とする実証研究─』(同友館) |
2012年度 | 加藤俊彦 | 『技術システムの構造と革新─方法論的視座に基づく経営学の探究─』(白桃書房) |
2011年度 | なし | |
2010年度 | なし | |
2009年度 | 李東浩 | 『中国の企業統治制度』(中央経済社) |
2008年度 | 岩田智 | 『グローバル・イノベーションのマネジメント─日本企業の海外研究開発活動を中心として─』(中央経済社) |
藤田誠 | 『企業評価の組織論的研究─ 経営資源と組織能力の測定─』(中央経済社) | |
2007年度 | なし | |
2006年度 | 川上智子 | 『顧客志向の新製品開発─マーケティングと技術のインタフェイス─』(有斐閣) |
2005年度 | なし |
▶論文部門
2023年度 研究奨励賞 |
久保田達也・大沼雅也・積田淳史 | 「専門家ユーザーによるイノベーションへの関与と障壁―医師を対象とした実証分析―」『日本経営学会誌』第 56号掲載 |
2024年度 研究奨励賞 |
髙橋宏承 | 「組織構成員の外向性と組織内孤立の関係性」(『日本経営学会誌』第 52 号掲載) |
2022年度 |
内田大輔・
芦澤美智子・ 軽部大 |
「アクセラレーターによるスタートアップの育成―日本のアクセラレータープログラムに関する実証分析―」(『日本経営学会誌』第 50 号掲載) |
2021年度 | 平野恭平・ 三井泉・ 藤田順也 |
「経営学部創設期の「落書き」による学生たちの心性史試論-神戸大学附属図書館蔵書を一例として」(『日本経営学会誌』第48号掲載) |
2021年度 研究奨励賞 |
林侑輝 | 「逆境期における長寿企業の生存戦略-倒産企業との比較分析に基づく類型化」(『日本経営学会誌』第47号掲載) |
2020年度 研究奨励賞 |
柴野良美 | 「組織⽂化が企業不正に与える影響−企業理念のテキストマイニングを⽤いた定量的実証研究」(『日本経営学会誌』第 45 号掲載) |
2019年度 | 林祥平・ 森永雄太・ 佐藤佑樹・ 島貫智行 |
「職場のダイバーシティが協力志向的モチベーションを向上させるメカニズム」 |
2018年度 | 加藤崇徳 | 「技術多角化と技術の時間軸」(『日本経営学会誌』第 38 号掲載) |
2017年度 | なし | |
2016年度 | 西岡由美 | 「契約社員の人事管理と基幹労働力化―基盤システムと賃金管理の二つの側面から―」(『日本経営学会誌』第36号掲載) |
2015年以前の対象は45才以下の会員による執筆論文
2015年以前の履歴については学会ニュースをご参照ください